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最高裁判所第三小法廷 昭和23年(れ)1953号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人遊田多聞の上告趣意は末尾に添附した別紙書面記載のとおりである。

(二) 上告論旨第二點は第一審裁判所が辯護人の證人喚問申請を却下した場合に第二審裁判所がその證人に對する司法警察官の聽取書を證據とするには、請求の有無にかゝわらず、同人を公判期日に訊問する機會を被告人に與えなければならないのに原審においてその事がなかったのは刑訴應急措置法第一二條第一項の精神に反するというのである。しかし旧刑事訴訟法および刑訴應急措置法上さようの事が要求されていないことは既に當裁判所の判例にもなつている。(昭和二三年(れ)第八九二號同年一二月一六日第一小法廷判決)

(三) 上告論旨第三號は、原審において檢事が「第一審判決書理由摘示の事実とおり公訴事実を陳述した」ことを非難するのであるが、これは檢事としてむしろ當然のことであるのみならず、旧刑事訴訟法第三四五條第一項には「檢事ハ被告事件ノ要旨ヲ陳述スヘシ」とあるのみであるから、いやしくも被告事件の要旨である以上、それをいかに陳述してもさしつかえないことは、當裁判所當法廷の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第六六八號同年一〇月二六日第三小法廷判決)(その他の判決理由は省略する。)

これを要するに、以上三點の論旨いずれも理由がないものと認める。

よって刑事訴訟法施行法第二條旧刑事訴訟法第四四六條により主文のとおり判決する。

以上は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

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